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霜を払う種 — Epoch SF短編小説の挿絵
SF終末・ポストアポカリプス

霜を払う種

三万年分の種を、私はひとりで見張っている。


地下三百メートル。永久凍土の底に掘られた保管庫〈ノア〉は、崩壊した世界が遺した最後の約束だった。棚は北の闇へ延々と続く。銀色の容器が、星のように整列している。中身は種だ。麦、樫、苔、名も知らぬ草――かつて地上にあったすべての緑が、ここで眠っている。


私の仕事は単純だ。気温を保ち、湿度を測り、記録をつける。芽吹くその日まで、種を守ること。


だが、二百年。種は一粒も芽吹かない。


一日は、いつも同じ形をしている。目を覚まし、十二本ある棚の通路を端から端まで歩く。容器の蓋に霜が降りていないか、培地の色が濁っていないか、指先で確かめる。計器の針を読み、保管簿に「異常なし」と書く。それだけで、私の一日は尽きる。


地上はまだ凍っている。観測窓の向こうで、白い嵐が今日も世界を削っている。文明が灰になった理由を、私はもう正確には思い出せない。戦争だったのか、空が割れたのか、ただ寒さが来ただけなのか。覚えているのは、最初の番人から受け継いだ言葉だけだ。


「種が芽吹いたら、それが再生の合図だ」

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