KH-02、または父と呼ばれた夜
夜の十一時を過ぎた頃、キリシマ工房のシャッターを叩く音がした。桐島哲は溶接ゴーグルを外し、腰を伸ばした。五十五歳の身体は、若い頃と同じように動くふりをするのをやめて久しい。軋む膝をかばいながらシャッターを上げると、雨に濡れた人影が立っていた。人影ではなかった。ヒューマノイドだった。型番は古い。第二世代の筐体——腕の外装が剥がれ、左脚のジョイントが完全に動かなくなっている。それでも直立していた。雨水がシリコン製の肌を伝い落ちている。「修理を、お願いできますか」声帯モジュールが損傷しているのか、音がひどく割れていた。哲は黙ってシャッターの内側に通した。工房の蛍光灯が、ヒューマノイドの全身を照らす。「伝票は?」「荷物入れの中に」哲は背中のパネルを開けた。折り畳まれた紙が一枚、入っていた。依頼主の欄が空欄だった。金額欄も。ただ「修理をお願いします」とだけ書いてあった。哲は伝票を台に置き、背中の製造番号を確認しようとして——手が止まった。「KH-02」声に出したつもりはなかった。しかし口が動いていた。KH-02。Kirishima Healthy-series、試作第二号。八年前、二十七歳で事故
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