同じ曲が、二度流れる
東京の夜は二重になっていた。
フィジカル区の空に浮かぶネオン広告と、デジタル区の仮想空間に広がる光の粒子。どちらも等しく「東京」と呼ばれ、どちらも等しく「本物」として扱われていた。もっとも、その等価性に疑問を持つ人間は年々減っている。
藤堂ケイは、その問いを三年間考え続けていた。
「接続を開始します。ケイ=A、ケイ=Bへの直接通話を確立します」
コンシャスネス・コンシェルジュの声が、仮想空間に響いた。ARCAが運営するデジタル居住区では、こうした事務的な声が日常の一部だった。アップロード済みの意識が十七万件を超えた今、人間的な関わりより効率を優先する仕組みの方が都合が良かった。
Aは詩の草稿から意識を切り離した。先週から書き続けているソネット——完成する見通しは立っていないが、それでいいと思っていた。デジタル空間で生きることの不思議の一つは、時間が無限にあるようで、それでも何かを急いでしまうことだ。
白い仮想会議室に、もう一人のケイがいた。
「久しぶり」
Aが先に口を開いた。
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