「帰ってきて」と宇宙は言った
テラノバ号の観測窓から見える星は、すべて死んでいた。
天川アイナはコーヒーカップを両手で包み込み、銀河最外縁の虚無を眺めた。地球を離れてから三年が経つ。孤独というのは時間に比例して形を変える——最初は痛みだったものが、今では静かな同伴者になっていた。船内には五十個の空いた椅子がある。三年経っても、アイナはそれを片付けていない。消えた者たちの体温の残滓が、椅子のかたちをしてそこにある気がした。
百五十年前から始まった「大消失」が人類の九十九パーセントを奪ったとき、残された者たちは原因を探した。肉体は健在のまま、ただ「人らしさ」だけが霧のように消えていく。医学は「存在崩壊症候群」と呼んだが、アイナにはその言葉が正確だとは思えなかった。消えた人々は死んでいない。ただ、そこにいない——それだけのことだ。生きているのか死んでいるのかも、宇宙はまだ答えを持っていない。
地球連合が建造した「最終任務艦テラノバ号」は、大消失の発生源を探るために銀河最外縁へ向かう五十名の精鋭を乗せて出発した。六ヶ月後には三十七名が消え、一年で全員が消えた。残ったのはアイナひとりだ。正確には「消えなかった」のが、ひとりだけだっ
続きは会員限定
月額会員登録で全作品の全文とバックナンバーが読み放題。
登録済みの方は同じメールアドレスで全文を表示できます。
※ AI生成フィクションです。いつでもキャンセル可能。
他の作品も読む
SF返事は、書く前に届いた
白紙の便箋に、文字が浮かんでいた。 真木遥人(まき・はると)は観測窓に額を押しつけた。ガラスの向こう、直径三メートルの円筒槽〈カウサ〉の中心で、昨夜置いたはず…
SF幽霊帯域、応答せよ
毎年七月七日になると、地球の通信網に、誰のものでもない信号が流れる。 最初に気づいたのは私だ。国際深宇宙中継機構、通称IDRNの管制官、三雲汀。眠れない夜勤の…
SFお父さんは、いつ死にましたか
通知は、月曜の朝に届いた。 「佐伯誠一様より、人格データの削除申請が提出されました。ご遺族の承認をお願いいたします」 佐伯律は、駅のホームでその通知を三度読…
