二度目の死は、許可制だった
「あなたを、もう一度だけ殺します」
鳴海はそう告げるのが、離任課の仕事だった。
面談室の椅子にいるのは、四十年前に死んだ男だ。速見一郎、登録番号〇〇〇一。第二勤続制度の、最初のアップロード。肉体はとうに灰になり、意識だけが社のサーバーで働き続けている。
「離任、おめでとうございます」鳴海は型どおりに言った。「本日をもって勤続を終え——二度目の死を、迎えていただきます」
モニタのなかの速見が、穏やかに笑った。生前の顔を再現した映像が、目を細める。窓のない面談室に、空調の低い唸りだけが満ちていた。
「やっと、か」
やっと。その一言が、鳴海の喉に小骨のように刺さった。
離任を告げられた意識の多くは、取り乱す。消えたくない、まだ働ける、と。彼らにとって二度目の死は、本当の終わりだ。だが速見は、長く待った人の顔をしていた。
「お別れの前に、確認したいことは」
「ひとつだけ」速見は言った。「きみの離任日は、いつだ」
「……わたしは、生きています」
「そうか」彼は静かにうなずいた。「では、まだ知らないんだな」
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