あなたたちの叫びが止んだので
木星の影が、スクリーン越しに広がっていた。
三村アイは、モニターに映る正二十面体を見つめたまま、14時間が経過したことに気づいた。直径312メートル。表面は完全な鏡面で、反射率は99.97パーセント。あれほど完璧な幾何学的構造を、自然のプロセスは生み出さない。それだけは確かだった。
「三村、フリンが呼んでる」
隣席の同僚がそう声をかけたとき、アイはようやく顔を上げた。耳鳴りがしていた。低い、一定の音。あの物体がエウロパ軌道に出現した72時間前から、ずっと続いていた。
JPLの第4会議室には、十数カ国の代表がオンラインで接続していた。UNISComの議長であるフリン・ホーが、低い声で現状報告を読み上げた。
「シュルマン・プロトコルに基づき、我々はこの72時間で音楽・素数列・DNAコードの三種類のアプローチを試みた。いずれも反応はゼロだ。物体は軌道を維持したまま、一切の電磁波を発していない」
誰かが咳払いをした。会議室の空気が重かった。
「このまま無反応が続いた場合、物体は48時間以内に自律的に離脱すると予測される」
アイの指が、キーボードの上で止まった。
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