SF近未来都市・テクノロジー
記憶の値段
最初に売ったのは、祖母の顔だった。
二万三千円。「高齢者・家族・温かみ系」の記憶は需要が高く、買取価格が安定しているとリサーチ結果が示していた。専用クリニックのカウンセラーが「この記憶は完全に消えるわけではありません。アクセスしにくくなるだけです」と説明してくれた。
朝倉哲也は、それを信じることにした。信じないと、続けられない。
記憶売買が合法化されたのは三年前だ。正式名称は「神経記憶コンテンツのデジタル移転及び商業流通に関する法律」。長い名前だ。街中では「メモリー・マーケット」と呼ばれている。
仕組みはシンプルだ。記憶を抽出して売れる。抽出された記憶はデジタル化され、カプセルとして他者に販売される。買い手は他人の記憶を「体験」できる。記憶観光、感情サブスクリプション、トラウマ治療への応用——さまざまな用途がある。
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#SF短編#記憶売買#アイデンティティ#Epoch#近未来
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